TAYL式 トークイベント開催七つ道具+2

(この記事は、「経営法友会リポート」に某氏が執筆した記事の続編を掲載したものです。)

過去、TAYLを12回運営するうえで突き当たった悩み、それを解決する道具を紹介してみたいと思います。これを読むと、TAYLのキャラクターをうかがい知ることができると思いますし、また、様々なイベント開催のヒントにもなるのではないかと思います。(イベント自粛のこのタイミングでは、非常にタイムリーさを欠く記事となってしまいました。。。)

1 ワイヤレスマイク(ヘッドセット)

トークイベントといえば、TEDでおなじみの「ヘッドセットマイク」が最初に頭に浮かびます。これを使っていると、「おお、このイベントは本気だわ!」とオーディエンスの皆さんに思ってもらえること請け合い。TEDのような素晴らしい舞台を作るには、ヘッドセットマイクの購入は避けて通れません。TEDでプロが準備するヘッドセットマイクは推測で1個6万円以上するので自費購入するのは躊躇します。

ですがTAYLでは、サウンドハウスさんからSHUREのヘッドセットマイクを調達して会場で使っています。このSHUREはバンドやる人ならみんな知っているダイナミックマイクのトップメーカーですね。比較的安価なモデルも出しているのです。

TAYLでは、MCを務めるKOBIEと、プレゼンターのRJKがそれぞれマイ・マイクとして1本ずつ導入してます。何事も見かけから入るのがTAYL流。

2 クリッカー

せっかくワイヤレスマイクがあるのに、スライド送りのためにPCから離れられないというのは本末転倒。必ずクリッカー(スライド用リモコン)も準備しましょう。

TAYLで長年愛用しているのは、KOKUYO製の“kokuyoseki”。2013年に購入してから社内外のプレゼンで数万回のクリックをしてきましたが、今も問題なく使えます。クリッカーで一番大事な点は、手元を見ずに間違いなく意図したボタン(スライドを進める等)を押せるかどうか、という点です。レーザーなんてなくて良いんです。TEDでレーザー使っている人は見たことないでしょう?

https://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/fp/

クリッカーの動作がおかしいとプレゼン自体のテンションも下がってしまうわけですが、このkokuyosekiはRJKが個人的にもっとも信頼を寄せています。サブとしてもう1つ購入を検討しており、大事な本番では必ずこれを使ってます。時に、ビジネスパーソンへのプレゼントにもするほどです。TAYLのプレゼンターにとってkokuyosekiとは、ジェダイにとってのライトセイバーのようなものであり、TAYLとは切っても切り離せない大切な道具です。

3 ハロゲン式ライト

TAYLは真面目な勉強会ではありません(ですので、遠慮せずにどんどんプレゼンターに立候補してもらえればと)。

オーガナイザーとしては、法務パーソンをインスパイアし、また、法務パーソンが表現するための「舞台」を提供したい。そんな空間にふさわしい光は、蛍光灯の青白い光ではないのですね。色温度を下げることが必要です(電球色へ)。

TAYL10までは某社の会議室をお借りしてましたが、会議室と言えば、当然蛍光灯しかない。そんな会議室を非日常的な舞台に変えるために色々と探したところ、見つけた現在の「解」はこれ。

工事作業用のハロゲンランプです(写真では色調が自動的に修正されてしまっていますが、実際の光は暖色系です)。50人キャパの会議室もこれを3台ほど使えば一気にイベント空間に変わる(ステージには別途ライトを当てます)。1台1300円程度。膨大な発熱があるのでやけどに注意。冬は暖房にも。

4 HDMIスイッチャー

プレゼンターが入れ替わる時にいちいちHDMIのコードをプロジェクターと繋ぎ変えているのを見るのは、オーディエンスとしては興醒めです。オーディエンスが気にする以上にオーガナイザー側は気にするものです。それもあってか、どこのトークイベントでも気の利いたMCが間を持たせてくれわけですよね。まさに、このつなぎ部分のトークを考えるのがMCの大切な仕事でもあります。

しかしTAYLでは、できるだけプロフェッショナルな舞台を実現すべく、HDMIスイッチャーをテストしてきました(スイッチャーを使うこともあれば、VJソフト内で切り替えることも)。

amazonなどで数千円程度で手に入る市販の安いスイッチャーは、画面を切り替える時に数秒のタイムラグが出ます。これはイベント用途としてはNG。タイムラグなくビシッと画面転換できるものは10万円以上します・・・という価格が普通のスイッチャーの中で、1万円程度でオススメできるのがOptimal shop 4X1 HDMI Multi-Viewer(米国のamazonで入手可能)。この価格で本当にタイムラグなしのスイッチングを実現できる神のようなスイッチャー(唯一不満なのは本体には切り替えスイッチがなく、全てリモコン操作となっていること)。You Tubeでdrikinさんの動画を見て導入決定。

実際に社内イベントでも使いました。トークセッションで、PCのスライドを映しつつ、時に講師(弁護士・弁理士)がホワイトボードに板書する映像(ライブカメラ)に切り替えるなど、そういう状況では非常に効果的でした。

さらに、もしこれからもずっとイベントを続けるつもりであれば挑戦したいのが、昨年発売されたばかりのBlack Magic DesignsのATEM MINI(約4万円)。YOUTUBERの間で人気沸騰のため、発売後数カ月は品薄状態が続いていました。

TAYL FOUNDATIONでも早速入手し、次回TAYL13で実戦投入予定。

5 VJソフト“Resolume”

オランダ製のVJ(Video Jockeyソフトウェア)。

TAYLでは、開演前のカフェタイムのBGV(バックグラウンド映像)をロゴと透過合成して投影したり、TAYLのジングルをポン出ししたり、といった作業に使ってます。

とあるホテルのバンケットルームで開催された某社の記念式典で、映像送出に駆使したところ、ホテルのテクニカルスタッフも驚愕。テクニカルも一手にやってしまうタイプのイベンター上級者を目指す人にはお勧め。毎年11月末から12月にあるBlack Fridayならば半額で購入可能(多分毎年やってると思います)。

6 カメラ類(スチール&ムービー)

TAYLでは、初回から各プレゼンターの姿を収録してきました。

登壇してくれる皆さんはきっと自分がプレゼンしている姿をみる機会は少ない。

だから、TAYLではせっかくの「舞台」を撮影しています。登壇部分の映像をプレゼンターに渡すと喜ばれ、プレゼンターとのコミュニケーションは深まります(依頼いただいたにもかかわらずまだ送れてない方もいて、スミマセン)。

さらにオススメなのは、自分のプレゼン映像を家族に見せること。特に子供からリスペクトされること請け合いです(ちなみにうちの子は、父親の仕事を”法務”ではなく“プレゼンター”だと認識してます)。勿論、自分のプレゼンテーションを客観的に見直すためにも、動画を残すことが重要です。

RJKは、TAYL本番の翌日、撮影した動画をチェックしてiPhoneに振り返りメモを残すようにしています。その後、新しいプレゼンを書き下ろすときは、必ず前回のプレゼン映像とそのメモを見直すところから始めます。(いま取り組んでいる「武術としてのプレゼンテーション術」が、連続物だということもあり・・)

TAYLでどんなカメラを使っているかというと、家庭用のビデオカメラをメインに廻し、GO PROや一眼レフなどを場面場面で使うという構成。

もう一つ。

TAYLを主催していると、現場では、次の進行を考えつつテクニカルな面の対処に追われます。ひどい時には、仕上がっていない自分のプレゼンをイベントスタート後になんとか仕上げる・・・という作業をする羽目に陥り、結局、各プレゼンテーションをほとんど見ることができないものなのです。

だからいつも出演者にことわってビデオ撮影させてもらい、翌日に視聴させていただいてます。

7 Peatix

TAYLが終了すると、そのまま懇親会DAYL(Drink As You Like:別名、新橋法務交流会。こちらはTAYLよりもさらに歴史が長い)が始まります。

KOBIEにとってはDAYLの会費徴収作業が長年の課題だったのですが(とりっぱぐれもあったらしい・・・)、現在はチケット発券サービスのPeatixを使ってます。入場者チェックや、申込者人数把握などもでき、主催者側の手間もだいぶ削減されてきました。こういうサービス、本当に素人イベンターには助かります!

あとは、Peatixに収める手数料がもう少し安くなると最高です。

8 薫り高いコーヒー

マイクがなくとも、ハロゲン式ライトがなくとも、HDMIスイッチャーがなくとも、素晴らしいイベントはできます。発想を変えればいい。

薫り高いコーヒーを準備して、サロンのようなムードを目指す。仕事帰りに立ち寄ったトークイベントに、美味いコーヒーが一杯準備されているだけで、空気はなごみ、リラックスした「場」をつくれます。

TAYLでも、開演前のカフェタイムを設け、スターバックスからコーヒーをケータリングしてお出しするなどの小さな工夫を続けてきました。コーヒーを飲まない人も結構いるのですが、イベントの大切な道具だと思っています。

9 ホスピタリティ

正直イベントで出来ることというのは、準備できる機材や設備によって天と地ほど変わってきます。機材もコーヒーも準備できない場合はどうすればよいのでしょうか?

たとえどんな状況であっても、ホスピタリティだけは心の中に準備できる。そう考えると気分が楽になりますよ。

どんなに機材があったとしても、どんなに有名なプレゼンターが登壇してくれたとしても、ホスピタリティのないイベントでは意味がないでしょう。仕事ではなくプライベートでわざわざTIME/MONEY/ENERGYを超越しながら作るのイベントなのですから。

あたたかく前向きな「場所」を作る、という思いこそがもっとも大切だと思います。その思いがホスピタリティです。実は、設備も機材も全て、このホスピタリティの一つの現れとして存在するのだと思っています。

番外:イベントに関する書籍

どうすれば「来てよかった!」と思えるようなトークイベントになるのでしょうか?

セキュアに自己開示・自己表現できる「場」はどうすれば作れるのでしょうか?

魅力のある長続きするイベントはどうすれば作れるのでしょうか?

TAYLを続ける中で、ある程度クリアした部分もあれば、まだまだ道半ばという部分も多いです。いずれにせよ、これらの問いを考え続け、実験し続けることが主催者の役割であり楽しみなのだろうなと。

「場」を作ることの必要性と重要性、そしてそのための考え方は、最近刊行された次のような本からも学べます。

◆「最高の集い方――記憶に残る体験をデザインする」プリヤ・パーカー(プレジデント社)
◆「読書会入門 人が本で交わる場所」山本多津也 (幻冬舎新書)

特に、読書会入門を読んでみると、TAYLの考え方と結構共通するものがあり、「そうだよな、そうだよな」と共感します(笑)。

7つ道具シリーズ、書いている分には結構おもしろいですね。

道具には、持ち手が求める精神性が多分に反映されているからでしょう。精神性をダイレクトに文章にするのはためらわれますが、それを反映している「モノ」を媒介にして文章化するのであれば、意外に書きやすい。読み手の方も、書き手の説教臭さを感じることもなく、読みながら想像力を働かせる余地が残るので、楽しいのでは?ちなみに私は、他の人の7つ道具的な物を知ることにはとても興味を持っています。

What’s in my bag? と同じようなノリですね。